防災部会
活動報告
能登半島地震 応急危険度判定士派遣
2024-06-10
注目チェック
2024年1月1日16時10分ごろ、石川県能登半島で最大震度7の揺れを観測する大地震が発生しました。
長野県にも支援要請が来たことにより、その要請をうけ、上伊那支部では第三陣として3名が派遣されました。
【市街地を主に応急危険度判定で回った感想】
輪島市街地は区画が狭い住宅地であった為、間口が狭く奥に長い家屋が多かった。道路、または南に面した方向に開口部が集中した設計が多く、耐力壁が確保できずに倒壊した可能性がある。また、奥に長い敷地の奥部分を増築している建物が多い。採光などを得る為、切りかき部分の2階が有り、増築部分も被害を受けていた。
基礎は、無筋である事がほとんどで、クラックをはじめ基礎の破壊+横ズレ+沈下など修復不可能になる被害を確認。細かく見ていくと、土台がアンカーボルト抜けて離れている。基礎の破壊とされている物の全てで確認できる(←破壊原因は無筋)。アンカーボルトが抜け、建物が基礎から落ちて移動した物件もあった。
新しい(新築して間もない)建物は無事に立っているのだが、玄関段差ポーチまたは土間の破壊がある。家の倒壊に比べれば軽微ではあるが、無被害ではない。
構造体では、通し柱が胴差部分で折れていた。
次に問題になるのが、柱頭柱脚金物である。倒壊・半壊建物の移動の多くに見られたのが金物の無い柱だった。耐力壁がいくら働いたとしても引抜力で柱のほぞが抜ければ耐力負担できないため原型をとどめる事は出来ない。柱の引抜計算は N 値計算が一般的ではあるが、「N 値 0」になる柱でも金物は必要ではないかと疑問になる。新築時の計算は耐力壁を計算しているため、雑壁や不可抗力が引抜力を発生させると考える。今後の検討課題だ。耐力壁・柱頭柱脚金物・アンカーボルト・有筋基礎が倒壊を免れる重要な要素と感じる。
被害を受けた建物はほとんどが古い建物。道の拡張で新しくなった住宅などは、被害が少なかった。裏通りに入ると古い建物が倒壊している。海沿いである為に屋根は瓦葺きがほぼすべてを占める。上部が重いのも、被害が多く出た原因の一つだと思われる。
上伊那で地震が起こると、想定では震度5弱~5強と言われている。輪島では数回にわたり地震が起きた。2回目、3回目で倒壊する建物も多くあったようだ。
現状、耐震改修されずに住まわれている住宅が多いが、すべて耐震化するのは困難な上、また費用も大きくなるために二の足を踏む人も少なくない。倒壊して亡くなることや、倒壊して隣の家に被害を与えること、通行人が巻き込まれる問題もある。また、倒壊した建物が道路部分をふさぎ、地域住人の車両や緊急車両などが通行できないなど不測の事態は避けなければならない。とにかく、1度目の地震で倒壊しないようにするのが古い建物の課題である。耐震工事で評価点 0.7 以上と言わず、南面や開口方向の耐力壁のみの工事も効果があるのではないか。その耐力壁一つで倒壊せず逃げる事ができれば、その後の選択肢があると提案をする。
こうした災害の度、少しづつ世間に周知されてきているが地域や被害状況によって対応は変化するので、上伊那は上伊那で備えなければならないと感じた。
(佐野 恭馬)
2024年 1月 1日 16時06分 最大震度7 発生
(公社)長野県建築士会 災害支援 :【 応急危険度判定 (一般家屋等) 】
2024年01月10日~13日活動 (第3陣)
(公社)長野県建築士会上伊那支部
参加者:唐澤 寿、佐野恭馬、丸山幸弘
今回の能登の地震においても土砂災害による家屋の倒壊、集落の孤立といった被害がありました。上伊那も大部分が伊那谷にあり、その位置ゆえに道路交通も比較的限定されており同様な被害が起こる恐れは十分にあります。必要に応じ、大地震に備えた家屋への補強等を考えていくことはもちろんですが、大地震による土砂崩落などによる道路寸断で支援が行き届かない事態も予想し、行政の支援が機能しなくなることを認識し、各自で備蓄など防災対策を心がけておくことも必要かもしれません。